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2015年1月17日 (土)

20150118 安定してものを作る意味

しつこいようですが、私、元はエンジニアです。
電気工学の開発職をしていました。

開発職というのは、「世の中にある技術」を使って
「世の中にない製品」を作る仕事です。
そして、開発された製品を安定して生産して
「商品」とすることも大事な仕事です。

この「安定してものを作る」というのは、市場
つまりお客さんのところで不具合が出ないように、
お客さんの不利益とならないように、
最大限の努力をするということに繋がります。

安定してモノを作るには、材料の他、それを
作るための「道具」も必要になってきます。

業界では「治具(じぐ)」というのですけど、
その製品を作るためには必要不可欠なものです。
そして、その治具(道具)の作り具合によって
製品が安定して作れたり、不具合がでたりと
影響することとなります。

エンジニアと呼ばれる仕事に限らず、
伝統的な工芸品を作る職人さんでも、
「道具」を巧みに使うことで
より素晴らしい製品を作ることができます。

そこには、「よりよい製品をお客さんに提供しよう」
とするたゆまない努力があるのだと思います。

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さて、私は現在鍼灸の仕事をしていますが、
異業種から参入すると、いろいろと???と思うことに
出くわします。

鍼灸施術では、患者さんの症状によってはお灸を
することがあります。
例の艾(もぐさ)をひねってする、あの熱いお灸です。

この艾をひねってするお灸なのですが、
できるだけ細くひねって、糸状にしたお灸をしなければ
ならないことがあります。

このお灸を「糸状灸(しじょうきゅう)」と言って
なかなか指でひねって作るのは難しいものです。

ところが、艾を糸状にするのに、100円均一で売っている
コルクコースターを使うと簡単にできます。
2枚のコースターに少量の艾をはさんで、コースターを
擦るように動かすと綺麗に艾が糸状になってくれます。

もちろん、力を掛け過ぎると硬い糸状灸になってしまう
のですけど、力の入れ加減を調整すると
指でひねった糸状灸よりも、より安定して、
より細く、より均一な糸状灸を作ることができます。

これは力の入れ具合や、艾の量を変えたり、
ちょっと実験すればすぐにわかることです。

つまり、治具(道具)を使うことでよりお客さんに
安定した「施灸」を提供することができるように
なるのです。

しかし先日、同業の鍼灸師から面白い指摘を受けました。

「コルクコースターでひねると硬くなるから、
僕らの流派では御法度で、必ず指でひねらないといけない。」
と半ば馬鹿にしたように言われました。

全く理解に苦しむ考えです。

指でひねったほうがよりよいものができる根拠は
何でしょう?
指先の感覚?
それとも念力か何か、未知の力が艾に影響するのでしょうか?

もしかしたら、一度くらいは試したことがあるのかも。
でも、恐らく深く追求することなく、
「だめじゃん」と簡単に諦めてしまったのかもしれません。

私からすれば、指で艾をひねれば、体調や指先の
湿度(汗)、艾の量などのばらつき要因で、
できた糸状灸は形状の安定しない、ばらつきの大きな
ものになってしまうと思われます。

こんなばらつきのあるものが、コースターを使ったもの
より良質な糸状灸ができるとは思えません。
それは、安定して患者さんに施灸技術を提供することが
できないということです。

「昔からそうしているから」とか「僕らの流派では使っては
いけないのだ。」という考えが理解できないのです。

私は、なんでも新しいものを取り入れればよいと言っている
のではありません。
よりよい技術をお客さん提供しようとするのであれば、
「よいものはどんどん取り入れる」
「ただし、残さなければいけないものは残しておく」
という考えでなければ、その技術は発展しないのでは
ないかと思うのです。

だいたい、よい品質の艾を作るのだって
「よもぎ」から手だけで作っているのではなく、
「道具」を使わないと生成できないのですから。

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